若林隆久@経営×教育×地域×育児

高崎経済大学地域政策学部准教授の若林隆久のページです。経営学、組織論、ネットワーク論を専門とする研究者・大学教員が、研究、教育、学内外での活動、本・論文、地域、子育て、などについて書いていきます。

なぜ大学はオンラインで授業を行うのか③:ソーシャル・ディスタンスにすると教室が足りない

この記事の内容は執筆者個人の認識や考えであって、所属組織のものとは異なります。
※ 執筆者の専門分野は経営学であり、感染症・医療をはじめとしたそれ以外の分野の専門家ではない点にご注意ください。

大学がオンラインを中心に授業を行わざるを得ない、直接的、かつ、容易には解決できない理由として、教室が足りないということが挙げられます。この物理的な理由によって、多くの大学でオンラインを中心として授業をしなければならない状況となっています。

私も初めて聴いた時は「そりゃそうだ」と思ったのですが、ソーシャル・ディスタンスを確保するために間隔をあけて教室に着席することを義務付けた場合、教室に収容できる学生数は大幅に減ります。50%というのが目安となる数字です。

※ 50%の定員であれば本当に安全なのか、これまで通りに教室で授業を行ったらどの程度危険なのか、といった点にはもちろん議論の余地があります。また、新型コロナウイルスに関する状況の変化に応じて、何が適切な対応かということがこれから変わっていくこともありえます。

全面的に教室で授業を行う場合、単純計算でこれまでの2倍の教室が必要になるわけで、当たり前ですが教室が足りない大学がほとんどです。もしもそれだけの教室があるということであれば、むしろこれまでは過剰な設備を保有してきてしまったということで経営的にはあまりよろしくないかもしれません(余裕のあるキャンパスはうらやましいですが)。つまり、現在の状況が変わらなければ、教室での授業は限定的にしか実施できないということです。

どのように限定的に教室での授業を実施するか

学生のためにもできれば教室での授業を実施したいという想いが、(すべてではないかもしれませんが)多くの大学あるいは教職員にはあるように思えます。感染症対策への対応が十分できることを前提に、限定的であっても教室での授業の実施を模索しているのではないでしょうか。

限定的に教室での授業を実施する際に突き当たる問題として、感染症対策②教室での授業を実施する科目の選択(+時間割調整)が考えられます。

感染症対策については、いまだわからないことも多い新型コロナウイルスという感染症なので、慎重を期す必要があります。策定した感染症対策について「うまく機能するか」や「きちんと運用できるか」といった点にも不安が残ります。そのため、最初から実施可能な最大限の数の授業を教室で実施するのではなく、まずは必要最低限の数の科目で小さく実施してみるというのが適切な対応に思えます。状況の変化も激しく十分に環境が整っていない2020年度後期は、そのように位置づけるのが合理的かもしれません。

②教室での授業を実施する科目の選択については、最終的にどのような対応が適切となるかはわからないところです。さしあたりは、オンライン中心に授業を実施する大学でも、(一般的な講義と比べて少人数であることも多い)実技・実習・演習などのオンラインでは行いづらいと考えられる授業に限って教室で実施するという大学が多そうです。これらの科目は必修科目であったり大学で取れる資格に必須な科目であったりすることも多いので、オンラインでは授業できないからといって気軽に休講とすることもできないという事情も推測できます。
ただ、それ以上に教室で実施する授業を広げていく際に、どのように教室で実施する授業を選択するかは難しいところです。特に、大学では学生が履修を決められる自由度が高いことが多く、その場合は各授業の人数が事前にはわからなかったり時間割が学生ごとにばらばらになってしまったりすることが対応を難しくします。この点はかなり複雑そうですので、改めて考えたいと思います。