若林隆久@経営×教育×地域×育児

高崎経済大学地域政策学部准教授の若林隆久のページです。経営学、組織論、ネットワーク論を専門とする研究者・大学教員が、研究、教育、学内外での活動、本・論文、地域、子育て、などについて書いていきます。

研究室訪問マニュアル(ゼミ選択)

ゼミ選択の際の研究室訪問(研究室に行って教員と話すこと)ってした方がいいの?どうやってやるの?研究室訪問するとして先生と何を話せばいいの?などの声にお答えして、研究室訪問についてご説明します(2023年5月9日更新)。何か不備があればご指摘お願いします。
なるべくどこでも通用するようなものを心がけましたが、2年後期から4年前期まで続く必修のゼミを、2年前期に選択するということを念頭に置いています。
また、あくまで執筆者個人の認識や考えに基づいていますので、書いている内容を利用する際はあくまで自己責任でお願いします。もちろん、実際に研究室訪問をする教員が発信している情報があれば、それに従ってください。

どうやって研究室訪問をするのか(やり方)

最初にどうやって研究室訪問をするのか(やり方)を簡単に紹介します。
やり方といっても複雑なことはなく、興味のあるゼミの教員にメールで研究室訪問をしたい旨を連絡し、アポイント(アポ)を取った日時に研究室を訪問するというだけです。
学生視点でのやり方に関する難点のひとつはおそらくメールの送り方でしょう。
メールの文面については下記の別記事で解説しています。

なお、教員のメールアドレスは各大学のポータルサイトやLMSなどで確認することができるでしょう。

やり方の注意点

  • アポを取るために、メールを送ったりフォームから申し込んだりした後に、メールを確認せずに教員からの連絡を者がしたり反応が遅れたりすることに気を付けましょう。こちらも慣れており急ぎでない場合は良いのですが、ゼミ選択で締切が迫っている場合には、必要な情報を提供できずにみなさんの不利益にもなりうるのでやきもきしちゃいます。
  • アポなしで研究室を訪れてみるというやり方もありますが(特にオフィスアワーがある場合)、教員側の都合によってはしっかりと時間を取れなかったり準備ができなかったりという問題がありえるのであまりお勧めしません。
  • 授業の前後に話しかけてアポを取るという手もありですが、その場で日程調整できるとも限らないのでやはりメールなどでの連絡が無難です(授業の前後に話しかけるのは好ましいことだと思いますが、前後の授業などの予定で教員が十分に時間を取れないことも多々あります)。
  • 友達同士など複数人で研究室訪問をすることもできますが、お互いに得られる情報が薄くなるので個人的にはお勧めしません。もちろん、教員の方針や立て込んでしまい複数人での研究室訪問とせざるをえないという状況もあります。

2020年度以降にありえる変化

2020年度以降はZoomなどを利用してオンラインで実施するということも増えているかもしれません。また、メールではなくGoogle FormsやMicrosoft Formsなどで受付をしているかもしれません。
かくいう私も、研究室訪問はオンラインを中心とし(希望があり調整可能であれば対面も実施するつもりです)、申込はMicrosoft Formsで受け付けています。理由はその方が時間や場所の制約が少なくなったり便利だったりするからです。

→結局どうなったかというというと、研究室訪問は対面を原則として行い(必要に応じてオンライン併用)、申込はフォームが便利だねというところに落ち着いています(2023年5月現在)。

なぜ研究室訪問をするのか(目的)

研究室訪問はゼミ選択のためにするわけですが、①志望するゼミを選ぶため②選考を想定して志望するゼミに入れる確率を高めるための2つのどちらか(あるいは両方)が目的なのではないかと思います。

①志望するゼミを選ぶため

複数のゼミが候補である場合(それが普通だと思います)、どのゼミを選ぶのかの情報収集のために研究室訪問を行います。
研究室訪問でしか得られない最大の情報は、教員と一対一で話すことでその人となりを詳しく知ることができることではないでしょうか。文字情報や授業だけでは伝わらない学生との接し方がわかります。
もちろん、文字情報などだけでは得られないゼミに関する豊富な情報を得られる、疑問点・不明点を聞いて確認できるという点も重要です。

②志望するゼミに入れる確率を高めるため

ひょっとしたらこちらの目的の方が多いかもしれません。志望しているゼミに対して定員を超える希望があった場合、必然的に選考が生じます。そのため、少しでも志望するゼミに入れる確率を高めるために研究室訪問(やゼミ見学など)をしておこうという目的です。
研究室訪問をするだけの熱意を示すことにもなりますし、ゼミのことを理解した上で志望してくれていることにもなりますので、一般的にゼミに入れる確率は高まるでしょう。ただし、研究室訪問をすれば入れるというわけではないですし、その内容によってはマイナスにもなりうる点には要注意です。
中には研究室訪問を必須とするゼミや、研究室訪問時に内定を出すゼミもあるようですが、若林ゼミではそういったことはしていません。

研究室訪問で何を話せばいいのか?

「何を話せばいいのか?」の前に重要なことは、きちんと会話をするということです。おそらく教員と話すという状況でのきちんとしなければという意識から緊張するのだと思いますが、肩肘張らずにリラックスして話すことが重要です。教員の側も大それた期待はしていませんし助け舟も出すので(少なくとも私は)、リラックスしてお話ししましょう。

よくある失敗パターン

よくあるまずいパターンとしては、渡した資料に見入る・教員の質問の返答に迷うなどで黙り込んでしまう用意してきたであろう質問の一問一答になり会話が続かないの2つでしょうか。

  • については、目の前にいる人間(教員も実は人間です)とのコミュニケーションとして不適切で、結構な居心地の悪さを感じさせてしまいます。そもそもそう行動しないのが賢明ですが、「少し資料を見させてください」「少し考えさせてもらっていいですか」などと言うだけでだいぶ印象は変わります。
  • については、大抵の場合質問の中身がよろしくなく(ゼミ案内などに書いてあることの場合も)、「何しに来たんだろう」という印象になってしまいます。例えば、「ゼミ生の就職先」をたずねられることがありますが、場合によってはゼミ案内に書いてありますし、この質問が一問一答で終わると「それによってゼミへの希望が変わるのか?」という疑問も浮かびます。この問題は、なぜその質問をしたのかやそのトピックに関連する話題につなげることで解消できます。例えば、「ゼミ生の就職先」をたずねた後に、自分の進路の希望や就職について思っていることを話せば、自然と話は続いていきます。研究室訪問は急な話ではないはずなので、単にそれっぽい質問を並べるだけではなく、一手先や二手先の選択肢を用意・想定しておくということです。

で、何を話せばいいのか?

というわけで、個人的にはきちんと会話ができればそれでいいように思うのですが、あくまで研究室訪問ですので適切な話題・トピックというものもあるでしょう。
一般的には下記のようなものが代表的で無難でしょうか。

  • なぜこのゼミを志望しているのか
  • ゼミのどこに魅力を感じたのか
  • ゼミの分野のどこにどのような興味を持ったのか
  • ゼミに入ったら何がやりたいのか
  • ゼミ関連の情報を調べた上での疑問点や聞いてみたいこと

ただ、私の場合は下記のような内容でもいいと思っています。

  • 将来の進路(ぜんぜん考えていないということや不安に思っているということでも良い)
  • 部活・サークル・アルバイトなどの話
  • ふだん何をしているか(趣味や休日の過ごし方)
  • 大学生活の感想(最近はコロナ禍でみなさんが考えたり感じたりしていることも多いかもしれません)
  • 授業についての感想・興味深いと思ったこと(私の授業でなくても良い)
  • 最近の関心事や悩みごと

並べてみると「何でもいいんじゃん」という感じですが、まさにその通りです。
これだけだといい加減な教員だと思われてしまうので少し理由もつけておくと、①その人の興味関心を含めた人となりを知りたいからということと経営学・組織論・リーダーシップ・キャリアという専門分野を掲げているゼミなのでこれらの内容の多くが十分に専門分野と関連するからです。

もちろん、教員によって話してほしい内容は変わりますが、それについては各教員の発信している情報や直接のコミュニケーションから探ってみてください。
繰り返しになりますが、私としてはリラックスしてお話しましょうというスタンスです。

研究室訪問をした方がいいのか?

最後に研究室訪問をした方がいいのかという話です。
どちらかといえば研究室訪問をする気がない・した方がいいんだろうけど面倒くさいと思っている人向けの内容となるでしょうか。
結論から言えば研究室訪問をした方がいいと思います。
それには、①ゼミ生活をよりよくするためという理由②自分の経験・成長のためという理由があります。

①ゼミ生活をよりよくするため

「なぜ研究室訪問をするのか(目的)」で2つ目的をあげていますが、この2つだけでは志望する理由が決まっており定員もほぼ割れるだろう(どうなるかはフタをあけるまでわかりませんが)という場合にはやはり研究室訪問をしなくても良いようにも思えます。
しかし、実は研究室訪問には「ゼミ生活をよりよくするため」という第3の目的があるのです。
すなわち、教員に顔と名前だけではなく興味関心や人となりを覚えてもらうことによって、ゼミに入った後の満足度や活動の質が高まるということです。
ゼミのような少人数の場合には、ゼミ生にあわせて活動が選択・調整される可能性も高いです。早い段階から教員がゼミ生のことをある程度把握できていれば、ゼミ生の希望や興味関心を反映した活動を行いやすくなります。
また、ゼミやその専門分野に関してより正確で深い知識を持っておけば、ゼミ生の側もゼミ活動への準備(心の準備含む)をしやすくなります。
要するに、9月の初回のゼミで顔を合わせて急にうまくやるというのは学生も教員も難しいということです。できる限りお互いを知っておくことで、より良いゼミ活動になる可能性が高まります。

よくある表現ですが、「ゼミに入って終わりではなく、入ってからが本番である」ということを肝に銘じなくてはいけません。

②自分の経験・成長のため

ゼミという文脈を離れて抽象化すれば、研究室訪問は「知らない人にアポを取って話をする」という経験です。
将来的にこのような機会が豊富にあり、ある程度はうまくこなす必要があることは想像に難くないと思います。
それは遠い将来でもなく、まずは就職活動をするタイミングでOBOG訪問や面接という形で直面することになります。

せっかく研究室訪問という慣習があるのですから、これを利用しない手はありません。
研究室訪問やゼミ選択に関心がなくても(?)、いつか来る「本番」のために小さな成功体験あるいは失敗体験をしておくことをオススメしておきます。
最初からうまくできる必要はありません。
世の中の多くのことは経験を積まなければうまくできるようにはならないからです。
ぜひこの機会に「知らない人にアポを取って話をする」ということにトライしてみてください。
意外と面白いかもしれませんし、やってみれば大したことではないかもしれません。
教員は研究室訪問に慣れているので、多少うまくいかなくても大丈夫です。

おわりに

当初の想定以上にボリュームのある記事となってしまいましたが、ここまで読んでくれた人はありがとうございます。
悩むことも多いかもしれませんが、ゼミ選択もゼミそのものも楽しんでください。