かしこまったメールを書くことは学生にとってハードルが高いことだと思います。
そこで、研究室訪問を題材にメールの書き方を解説していきたいと思います(他の用途でも応用できるよう意識して解説しているつもりです)。
文例と解説に入るまでの前置きが長めですが、重要な点だと思うので読んでくれると嬉しいです。(2021年4月13日更新)
- 前提
- 大事なこと
- LINEやTwitterなどのSNSと異なる点
- 文例
- ①件名
- ②宛名
- ③あいさつ文
- ④所属・氏名
- ⑤端的に用件を伝える
- ⑥より具体的な内容や質問事項など
- ⑦日程調整
- ⑧結びの言葉
- ⑨署名
- ⑩使うメールアドレス
- おわりに
前提
「メールの書き方」と銘打った文章を書いておいてなんですが、実は正しいメールの書き方なんて存在するのかどうかはあやしいところです。
メールが一般に使われるようになってからそれほど長い歴史があるわけではありませんが、それでもメールが使われる社会環境というのは大きく変化しており、ある時期に正しいとされていたことも現在あるいは未来には不適切になるということも珍しくありません。
実際にメールでさまざまな人とやり取りしていると、非常に多様なメールの書き方があることに気づきます。
何度かやり取りする場合、私は相手の書き方にあわせた書き方に修正していくこともあります。
これは人とどのように話すかということと同じかもしれません(人それぞれであり、相手にあわせることもある。TPOもある)。
それでも、一般的に無難と思われる書き方は存在します。
特に、2020年代に学生が大学教員に対してという文脈に絞れば、無難な書き方や陥りやすい間違いというのは定まってきますのでそれを説明します。
できる限りなぜそのような書き方をすると良いのかという理由も含めて説明していきます(でないと応用がきかないので)。
個人的には、日常的にメールを使わない大学生が適切なメールを書けないのは当たり前だと思いますし慣れてもいます。
しかし、必要な情報が欠落していたり、不躾な内容となってしまっていたりしては、お互いの不利益です。
この機会にメールの書き方に少し慣れてみましょう。
大事なこと
ポイントは、メールも人とのコミュニケーションであることを認識し、相手の立場を想像しながら必要な情報をきちんと伝えることです。
例えば、質問のメールに対して返信が来たら、その返信へのお礼をメールで返信するというのは、メールだからどうこうではなく何かをしてもらったらお礼をするというコミュニケーションとして当たり前のことです。
また、(メールの特性を知った上で)宛名を書いてきちんと名乗ったり、用件を件名や冒頭で簡潔に伝えたりすることも、コミュニケーションとして当たり前のことです。
ですので、コミュニケーションとしてどうあるべきかや、相手の立場を踏まえた上での必要な情報は何か、ということを考えるようにしてください。
そういった意識をもってコミュニケーションする習慣をつけることは、メールなどの特定のツール上だけではなく、人とのコミュニケーション全般でも有用であり、今後の人生の様々な場面で役立てられると思います。
LINEやTwitterなどのSNSと異なる点
上で書いたメールの特性というものを知らないがゆえに適切なメールが書けないという側面があります。
大学生が慣れ親しんでいるLINE・TwitterなどのSNS上でのコミュニケーションと異なる点は以下のとおりです。
- 単に送っただけでは誰だかわからないのが普通(なので名乗る)
- メールでは相手ごとに表示されるわけではなく、一通ずつ(あるいはスレッドごとに)主に件名で表示される(だから件名が重要)
- 相手がPC・タブレット・スマホなどのどの種類のデバイスで見ているかは不明(特に最近の傾向。どのようなメールソフト、アプリ、ブラウザで見ているかもまちまち)
文例
まずは 件名と本文の文例を示します。
これが絶対の正解というわけではまったくありません。
まあまあの出来なのではないでしょうか。
続けて赤字で示した項目ごとに解説していきます。
【件名】
研究室訪問のお願い(地域政策学部2年・高崎太郎)(←①件名)
【本文】
若林隆久先生(←②宛名)
突然のメール失礼いたします。(←③あいさつ文)
高崎経済大学地域政策学部2年生の高崎太郎と申します。(←④所属・氏名)
この度は若林ゼミに興味があり、研究室訪問をさせていただきたくメールを差し上げました。(←⑤端的に用件を伝える)
~~~~~~(←⑥より具体的な内容や質問事項など)
つきましては、ご都合の良い日程をいくつか提示していただければと思います。(←⑦日程調整)
お忙しい中大変恐縮ではございますが、ご返信のほど、何卒よろしくお願いいたします。(←⑧結びの言葉)
---------------------
高崎経済大学 地域政策学部 2年
高崎 太郎(Taro TAKASAKI)(←⑨署名)
E-mail: ts20999@tcue.ac.jp(←⑩使うメールアドレス)
---------------------
①件名
- 件名は簡潔に用件を示すものを付けましょう。メールは一通ずつ(あるいはスレッドごとに)主に件名で表示されるため、相手の一覧性が高まります。
- 末尾の()内に所属・氏名などを書き、よりわかりやすくするというテクニックもあります。特に、似たような件名のメールが多そうな状況で有効です(まさに研究室訪問がそのような状況です)。
②宛名
- 相手の名前+敬称を冒頭に書きます。メールに限ったことではありませんが、送信先の間違い(いわゆる誤爆)に送信者も受信者も気づきやすくなるという利点があります。
- 一般的な敬称は「様」ですが、教員が相手の場合は「先生」が適切なようです。大学教員全般を「教授」と呼ぶこともありますが、肩書としての教授(他に准教授、講師、助教など)と紛らわしいので「先生」をお勧めしています。
- 他にも先生と呼ばれるような肩書の人には、「先生」を敬称として用いることが適切なようです。
- 所属組織や肩書を長々と書く場合もありますが、同大学内であれば個人的には不要だと思います。
- 宛名を書くのが一般的ですが、同じ相手とやり取りしている場合など状況によっては省略されることもあります。
③あいさつ文
- 何かしらのあいさつ文を冒頭につけることが普通です。一般的には「お世話になっております」(やその派生形)が使われることが圧倒的に多いです。
- 今回は目上の人に初めてメールをしてお願いをするという状況なので「突然のメール失礼いたします」というかしこまったあいさつ文にしています。前に「はじめまして」をつけてもいいでしょう。
- 個人的には学生とのやり取りであれば、「おはようございます」「こんにちは」などの軽めの挨拶が好みです。ビジネス上でもこれらのあいさつ文を使うことで、相手にちょっと違った印象を与える変化球とすることができます。
- あいさつ文も省略されることがままあります。
④所属・氏名
- 基本的には大学名・学部名・学年を書けば良いと思います。基本的に学科名までは不要なことが多いですが(そもそも研究室訪問時は学科は未決定ですが)、メールの案件に関わる場合は書いた方が良いでしょう。今回の研究室訪問の場合は学年は関係のある要素なので、書く判断をしています。
- 機械的に所属・氏名だけを伝えるのではなく、授業に関する質問の場合には「経営学の講義を履修している高崎太郎です」、以前特定のイベントであった人である場合は「《イベント名》でお会いした高崎太郎です」などというように、相手に文脈や関係性などがわかるように伝えることが重要です。特に、授業の質問の場合はどの授業の質問かがわかるようにしましょう。なぜならば教員は複数の授業を担当しており、大人数講義であればその多数の受講生を把握できないからです。重要なことは相手の立場を踏まえて伝わりやすいようにすることです。
⑤端的に用件を伝える
- 相手の内容理解を容易にするために一文程度で端的に用件を伝えます。件名と重複するような内容になると思いますが、もう少し詳しく説明できます。
- 特に初めてメールする相手には何の用件なのかを素早く伝えることが重要です(だから、最初に読まれるであろう件名に書く)。
⑥より具体的な内容や質問事項など
- ここに書く内容はケース・バイ・ケースです。研究室訪問の場合は、簡単な自己紹介、ゼミに興味を持った理由、研究室訪問で質問したい内容などを書くと良いでしょう。そうすることで教員の側も事前の準備や心づもりが可能になります。
- 私は開示できる情報は先に開示しておいてもらえると嬉しいです。例えば、「相談があります」と伝えられるだけよりも、「~~に関して相談があります」と伝えられておく方が良いですし、「~~に関して△△の点について相談があります。これこれしかじかの状況で悩んでいます」などと伝えてもらえるとなおよいです。その理由は、自分が話せる内容を整理しておいたり、調べ物をしておいたりができるからです。このあたりは好みもあると思いますが、事前に提示可能な情報については先に伝えておいてもらう方が合理的なのではないかと考えています。
⑦日程調整
- 制約が少ない日程調整では、基本的には目上の立場の人が日程を提示することが普通です。研究室訪問も特定の日時でなければならない理由はないので、お願いをする側など目下の立場の人がいきなり自分の都合がよい日程を提示するのは不躾な印象を与える可能性があるので要注意です(ただし合理的な部分はあります)。
- ただし、研究室訪問の場合はその学生の授業がある日時でやるのはまずかろうという意識もあるので(少なくとも私は)、自分の授業の時間割を提示するぐらいはしてもよいのかもしれません。
- 最近ではメールなどの文中で日程調整をするのではなく、様々なアプリケーションやツールを使って日程調整を効率的に行うことも増えてきました(身近なものとしてはLINEグループの機能がありますね)。
⑧結びの言葉
- 一般的に何かしら結びの言葉が必要になります。やや違和感があっても「何卒よろしくお願いいたします」と締めてしまえば良いです。「何卒よろしくお願い申し上げます」と申し上げてしまってもいいです。
- 「お忙しい中大変恐縮ではございますが」「ご多用中恐縮ではございますが」「お手数をおかけしてしまい大変恐縮ではございますが」などと相手を慮った表現を加えることも有効です。
- 相手に何かしらのアクションを求める場合は、「ご返信のほど」「ご検討のほど」「ご査収ご確認のほど」などで強調しておくこともできます。
⑨署名
- 署名は必ずしもつける必要はないかもしれませんが、基本的に自動的に署名がつくように設定しておくと便利だと思います。名乗り忘れた場合に役立つことはもちろん、長くなってしまうので本文中には書けない情報を載せられます。
⑩使うメールアドレス
- どのメールアドレスからメールを送るべきかというのは、学生の悩みのどころかもしれません。①基本的には大学メールを利用するが、②重要なことはメールできちんとやり取りできることです。①大学メールの良い点はその大学の学生であることが証明でき(場合によっては学生番号も伝わる)、迷惑メールと判定されにくいことです。ですので、大学メールを頻繁にチェックするか、Gmailなどの普段使いのメールで大学メールを送受信できるように設定しておくのが良いでしょう。ただし、②きちんとやり取りできることが重要なので、どうしても大学メールでいけないというわけではありません。
- CCに自分の他のメールアドレスを入れておき、「全員に対して返信」をしてくれることを期待することもできます。
おわりに
メールの書き方も、いろいろと調べたり参考にしたりしながら何度もメールを書き、様々な人とやり取りをすることでしか上達しないと思われます。
冒頭でも書いたように正しい書き方なんてありませんし、ビジネスでもLINEやビジネスチャットによるコミュニケーションの割合が増えてきており、メールは少し劣勢な印象もあります。
繰り返しになりますが、大事なことは、コミュニケーションとしてどうあるべきかや、相手の立場を踏まえた上での必要な情報は何かを考えられるようになることです。
論理的にも感情的にもこのようなことを考えられるようになった上で、各ツールの特性を理解して使い分けられるということが目指すべきところです。
千里の道も一歩からですので、この機会に一歩を踏み出してみてください。
きっと今後の人生で大いに役立つはずです。