若林隆久@経営×教育×地域×育児

高崎経済大学地域政策学部准教授の若林隆久のページです。経営学、組織論、ネットワーク論を専門とする研究者・大学教員が、研究、教育、学内外での活動、本・論文、地域、子育て、などについて書いていきます。

教育・研修における進捗とは何か

教育・研修における進捗とは何でしょうか。
学生の卒業論文や、論文や報告書といった成果物を求められる研修で、よく聞かれることがあります。

「(他の人や例年と比べて)私/我々の進み具合はどうでしょうか」

一方であまり気にしてもしょうがないんだけどなと思いつつ、他方で他の人の進捗や期限までに成果物を出せそうかが気になるのは人情だよなとも思いつつ、これまではわりと率直かつ大雑把に答えてきました。

教育・研修の目的から考えると

しかし、よくよく考えてみると、教育・研修の進捗というのは成果物の進み具合で測るべきではないかもしれません。

教育・研修の目的は学習や成長なので、本当は教育・研修の進捗は学習の到達度や成長課題を乗り越えられたかということで測るべきです。

例えば、論文・報告書の作成は、論理的な緻密さ、抽象的な思考力、適切な表現力、情報の収集能力や分析力、調査や実証への理解、などを身につけるために行うので、作成のプロセスをいい加減にしてしまえば、仮に成果物が完成して提出できたとしても意味はありません。

講師がやるべきこと

上記の教育・研修の目的を踏まえると、冒頭の質問を受けた時の講師の答えは下記のようにすべきなのかもしれません(質問者の意図通りに答えていないことを承知しつつ)。

①成果ではなく学習や成長に目を向けさせる
学習者本人は成果物の完成ばかりに気をとられてしまいがちなので(自然なことです)、学習や成長といった観点に言及したり、具体的な身に付けられる能力や成長課題を挙げて場合によってはその適用場面も指摘したりする(どこまで効果的にできるかはわかりませんが)。

②不安を適度に解消する
「他の人の進捗や期限までに成果物を出せそうかが気になるのは人情」と書きましたが、不安が大きいと学習・成長の妨げになりうるので、不安を適度に解消してあげる必要があります。
完全な安心を提供しないまでも、全体像や次の行動の方向性を示してたぶん大丈夫だと伝えます。


※ 上記の内容は若林個人の執筆時点での考えであり、所属組織や関連組織の考えを代表するものではありません。