若林隆久@経営×教育×地域×育児

高崎経済大学地域政策学部准教授の若林隆久のページです。経営学、組織論、ネットワーク論を専門とする研究者・大学教員が、研究、教育、学内外での活動、本・論文、地域、子育て、などについて書いていきます。

なぜ若林ゼミで海外フィールドワークを実施するのか

2017年度から若林ゼミでは大学の海外研修支援事業(補助金が出るのである)を利用した、海外フィールドワークを実施している。

2024年度までに若林ゼミで企画・実施したフィールドワークは下記のとおりである。

  • 2017年度春季:ベトナムホーチミン
  • 2018年度春季:中国・上海
  • 2019年度夏季:シンガポール
    (コロナ禍により中止)2019年度春季:インド・デリー
  • 2023年度夏季:フランス・パリ
  • 2024年度夏季:イギリス・ロンドン

2017年度から毎年度実施する心持ちであったが、コロナ禍での中止・中断を余儀なくされ、学生の要望もあり2023年度から復活した形だ。

 

さて、本題の「なぜ若林ゼミで海外フィールドワークを実施するのか」である。

 

このような問いが立つのには背景がある。
簡単に言えば、教員としても海外フィールドワークを実施することは実に大変なのである。
本当に大変なのである。

 

まず、海外に学生を連れて行く責任というものは大きい。もちろん、国内でも引率責任はあるがその比ではなく、多くの先生や社会人がこの点だけで「自分はできないなあ」と言うのを耳にする。

また、大学の海外研修支援事業を利用するということで、一定以上の水準の計画を立てる必要があるし、各種の書類仕事も増える。大学・学部・学科で必須のカリキュラムの一環でもなければ、私は研究で海外をフィールドとしていないので、友人知人や時に学生の伝手を使ってあの手この手で行程を考える必要がある(その分行先はばらけさせられる)。これもなかなか大変である。

次に、調整が大変ということがある。外せない他の仕事と重複しない時期にすることはもちろん、ずらせる仕事をうまくずらす調整をしなくてはならない。原稿を書くなど予定ではないものの仕事時間の確保も考えなくてはいけない(だいたい失敗する)。何より大変なのは家族との調整で、妻や子どものスケジュールや希望を汲んだり汲まなかったりして、どうにかこうにか実施しようというスタートラインにたどり着く。

マイナーな点では、他に使い道のある研究費も大きく食われることになる(最近は常にショートしている)。

 

ここまで書いてくるとなぜ海外フィールドワークを実施しているのかわからなくなる。
まさに「なぜ若林ゼミで海外フィールドワークを実施するのか」が必要となる。
この記事を書こうと思ったのもこれが一因である。

 

理由の説明するには、個人的な原体験(?)からの説明と、より一般的な説明がある。

 

個人的な原体験(?)の説明は簡単で、私自身が初めて海外を経験したのが、ゼミではないが大学の授業での募集に応募し大学教員に連れて行ってもらったというものであったからである。
自分自身もそういった機会をいただいた恩義があり、かつ、海外での経験が大きな刺激・成長をもたらしうる貴重な教育実践であると考えるために、様々な苦労や障害を乗り越えて実施できているという側面がある。

 

より一般的な説明は、既に書いた通り海外での経験が大きな刺激や成長をもたらす貴重な教育機会であるからである。

海外が初めてだったり経験が乏しかったりする学生にとって、与える影響は驚くほどに大きいこともある。ひょっとしたらこれが最初で最後の海外という人もいるかもしれないし、これをきっかけに海外に触れる機会が増えたなんてもこともありえる。どちらにせよインパクトは大きい。
また、海外研修や海外フィールドワークということで、多かれ少なかれ単なる観光旅行とは異なる要素が含まれることも、経験として貴重であろう(そう考えると、実り多くなるような企画をしなければならないと感じる次第)。
さらに、ゼミとしては、有志ではあるが同じメンバーでかなり長い時間をともにするので、関係性が強まるし、インパクトの大きな思い出を共有できる。特に、ふだんの日本での慣れた範囲での生活ではなく、慣れ親しんでいない言語・文化・環境で体力的にもハードとなりがちな生活を共にすることで、チームとしての協力が必須となる。単に仲良い以上の良いチームとなることが求められ、実際にそうなる。

ここまでいかに教育実践として貴重で重要かという視点で書いてきて教育実践者としての私にとってそれは意義や価値があるものであるが、一方で、それを抜きにした私個人にとっても意義や価値がある。
海外に行くことは、私個人にとっても大きな刺激や成長の機会となる。自分で企画するので、自分の研究や興味関心に沿うところを訪問できる。そもそも、一定の海外での経験があるとはいえ、まだ行ったことのない国・地域、見たことのない景色、経験したことがないものは無数にある。それらが大きな刺激や活力となってくれることは間違いない。
また、既に書いた通り、友人知人の伝手を頼りにすることも多く、お互い忙しくなかなか会う機会のない彼らと再会し、実施あの働きぶりや体験談を見聞きすることも大きな魅力である。幸いにも、駐在や留学も含め海外にいる友人知人が絶えることはない(誰がどこにいるかあまり把握できていないが)。

海外をフィールドとしておらず、仕事も増えてきて、家族もできた状態では、なかなかあえて海外に行こうということにはなりづらい。そういった自分に対して、半強制的に海外に行く機会を与えてくれるものだといえる(すでに書いた通り、苦労も多いが)。

なお、個人的には同行する家族などにとっても良い機会となっているとは考えている。

 

以上が、2024年度版の「なぜ若林ゼミで海外フィールドワークを実施するのか」である。